感染対策の基本
感染拡大を防止するとともに感染の機会をでき るだけ少なくするため、一人ひとりの心がけが 重要となります。
日常の衛生対策としては、手指衛生(手洗い・ 手指消毒)、うがい、咳エチケット、環境の衛生 などがあげられます。
特に、子ども、妊婦、高齢 者、基礎疾患がある人、免疫力が低下している 人は感染症にかかりやすくなるため、日常的な 健康管理も重要です。
感染症にかからない・拡げないために
- 外出時は人ごみを避ける(避けられない場合はマスクを着用する)
- 帰宅時はもちろん、頻繁に手指衛生、うがいを心がける
- 咳やくしゃみが出るときは、「咳エチケット※」を励行する
感染経路とその対応策
感染症の感染経路として重要なものに接触感染、 飛沫感染、空気感染があります。感染対策のために は、それぞれの感染経路に応じた対応が必要にな ります。
接触感染
病原体で汚染された手指を介した感染 → 「手指衛生・環境の衛生管理」
飛沫感染
咳やくしゃみ、会話などの際に口や鼻から出た病原体を含むしぶき(飛沫)を吸い込むことにより起こる感染 → 「マスクの着用など」
空気感染(飛沫核感染)
咳やくしゃみ、会話などの際に口や鼻から出た飛沫が乾燥して飛沫核※となり、長時間空中に浮遊し、空気の流れにより広く散布され、それを吸い込むことにより起こる感染 → 「防塵マスクの着用など」
手指衛生
手洗いの種類と効果
多くの病原体は手を介して伝播されるため、 手指衛生は感染対策の最も重要な手段です。 石けんと流水を用いた手洗いはもちろん、た とえ流水だけであったとしても、ウイルスなど を物理的に流すことができます。
手洗いの種類
一般的に手洗い方法は、目的に応じて 「日常手洗い」、「衛生的手洗い」、「手術時手 洗い」の3つに分類されます。 感染対策や食中毒対策のためには、通過菌を 100%除去することを目的とした「衛生的手 洗い」が必要です。
- 日常手洗い
- 食事の前やトイレ使用後など日常生活で行う手洗い
- 衛生的手洗い
- 感染対策、食中毒対策などに行う手洗い
- 手術時手洗い
- 手術スタッフが手術前に行う手洗い
手指衛生のプロセス
汚れが目に見えて明らかなときやトイレの後、汚 物処理後は、石けんで手洗いを行いましょう。 石けんと流水が使用できないときや、明らかな 汚れがない場合は、アルコール手指消毒剤を効 果的に活用しましょう。 また、手指消毒には、60〜80%のアルコール溶 液が効果的であるとされています。
目に見える汚れがある場合
石けん+流水で 手洗い
目に見える汚れがない場合
アルコール手指消毒剤で 手指消毒
アルコール手指消毒剤の有効性
- アルコールは手の付着菌を単時間で確実に減少させる
- 保湿剤等の配合により手荒れの問題も改善されてきている
- 水道を必要としないため、いつでもどこでも消毒ができる
などの理由から、2002年に発行されたCDC※の 「医療現場における手指衛生のためのガイドラ イン」により、その考えが大きく変化し、速乾性 アルコール製剤による手指消毒が高く評価され ています。
手指衛生が不十分になりやすい部位
親指や指先、指の間などは手指衛生が不十分になりやすいと報告されています。手を漫然と洗うのではなく指の間、手首、爪の間などを含め、ていねいに手洗いや消毒をしましょう。
手指衛生が必要な5つのタイミング
医療・介護現場の場合
1. ご利用者に触れる前 / 2. 清潔 / 無菌操作の前 / 3. 体液に曝露された可能性のある場合 / 4. ご利用者に触れた後 / 5. ご利用者周辺の物品に触れた後
一般生活の場合
公共の場所から帰った時 / 咳やくしゃみ、鼻をかんだ時 / ごはんを食べる時前と後! / 病気の人のケアをした時 / 多くの人が触れるものに触った時
ノロウイルス対策には徹底した手洗いを!
ノロウイルスは非常に小さいため、皮膚表面のシワ 等の凹凸に入り込みます。しっかりと洗い落とすた めには、1度の手洗いではなく、「2度手洗い」をお すすめします。 ウイルスはその構造からエンベロープ(脂質性の膜)のあるウイルスとないウイルスに分けられます 。
エンベロープのあるウイルスは、アル コール消毒剤からダメージを受けやすいのに対し、 ノロウイルスなどエンベロープのないウイルス(ノ ンエンベロープウイルス)は、ダメージを受けにく く、アルコール消毒剤が一般的に効きにくい傾向に あります。しかし、最近では、ノンエンベロープウイ ルスにも有効な新しい「酸性アルコール消毒剤」が 開発されていますので、正しい知識を持った上で、 適応した製剤を選択し、使用しましょう。
うがいの有効性(口腔衛生等)
うがいは口腔衛生等の対策の一つで、海外ではあまりなじみがありませんが、以下の効果が期待できます。
のどに潤いを与え、粘膜の働きを助ける◦うがいの刺激で粘液の分泌や血行が促進され、抵抗力が強化される◦口臭の予防
うがいの方法(例)
1. うがい液を口に含み、唇を閉じて頬の筋肉を動かし、「グチュグチュ」と口の中を洗います。
2. つぎに上を向いて、「オ~」と発声してうがいを行います。声が震えはじめるのは、うがい液が口蓋垂の奥へ届いている証拠です。
3. 冷たいうがい液が、口中で温かく感じてきたら、吐き出してください。
4. 1 ~ 3 を数回繰り返しましょう。
咳エチケット
咳エチケットとは、かぜやインフルエンザのよ うに、咳やくしゃみなどの呼吸器症状を伴う疾 患を他の人にうつさないようにするための対策です。
呼吸器感染症の拡大を防止するため、 一人ひとりが咳エチケットを実践することが 非常に重要です。
マスクを着用する
マスクがないときはティッシュなどで口と鼻を覆い他の人から顔をそむける
ティッシュなどが使えないときは手で押さえず、袖で口や鼻を覆う
ノータッチ式のゴミ箱を備え、使用済みのマスクやティッシュはすぐに廃棄する
鼻水などの呼吸器分泌物に触れた後は手指衛生( 手洗い・手指消毒)を行う
健康管理
体力、免疫力が低下しているとより感染症にかかりやすく、重症化する可能性が高くなります。
手洗いなどの衛生管理に加えて、日頃から十分な睡眠、バランスのよい食事、室内環境整備(定期的な換気や加湿器の使用など)を心がけましょう。
体調がすぐれない場合や発熱などの風邪症状がある場合は、外出を控えましょう。職場においては、長時間の時間外労働を避けるなど、疲労が蓄積しないように配慮するとともに、従業員の方が、休みやすい環境整備も大切です。
個人防護具
感染性物質から自分自身を防御するために着用するものを個人防護具(PPE:PersonalProtective Equipment)といいます。正しく着脱できていない場合は、感染を防御することができないだけでなく、着用している安心感から、他の感染対策がおろそかになり、かえって感染リスクが高まる危険性があります。
個人防護具には、マスク・手袋・ガウンなどがあり、作業内容を考慮し、状況に応じて適切に使い分けることが大切です。
マスク
一般的に市販されている不織布マスクや布マス クにおいても、着用することで飛沫を防ぎ、減ら すことができます。
- 不織布マスク(サージカルマスクなど)
- 呼吸器症状のある人が着用することで感染性呼吸 器分泌物の拡散を防ぐことができます。
- N95マスク
- 厳密には呼吸器防護具といい、感染性微粒子を含む 微粒子(飛沫核)の吸入を防ぐために高度なろ過機 能を有しています。したがって、血液、体液、分泌物 などの直接的な接触防止ではなく、結核など空気予 防策が必要な特定の感染症微粒子の吸引が疑われ る場合に、医療従事者などが装着します。
マスクの着け方(例)
ゴムひもを耳にかける(ノーズピースを鼻と頰の形にフィットさせる)
マスクを下に引き、鼻からあごまで覆う鼻に合わせてキュッと!
マスクの外し方(例)
ゴムひもを持ち、耳から外す
マスクの表側に触れないよう注意し、ゴムひもを持って廃棄する
高温多湿の環境下でのマスクの着用は、熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離が確保できる場合には、マスクを外しましょう。
手袋
手袋はウイルスなどの病原体で手指が汚染されないために着用する防護具です。使用する手袋は、防水性で使い捨てのものが必要です。室内の環境整備などを行うときにも着用します。
手袋着脱時の注意
- 装着前と外した後に必ず手指衛生を行います。
- 装着時は手袋の先を汚染させないように、手首の部分をつかんで装着します。
手袋の外し方(例)
手袋の袖口をつかむ
手袋の外側が内側になるようにひっぱる
反対側の手袋の外側に触れないように、手袋を外した手を袖口に差し入れる
外側が内側になるようにひっぱる
外した手袋はすぐに廃棄する
ガウン
体表部分(主に体の前面部分)を防御するために着用します。手袋と同様、ビニール製など防水性で使い捨てのものが必要です。
ガウン着脱時の注意
- 着用前と脱いだ後に必ず手指衛生を行います。装着前と外した後に必ず手指衛生を行います。
ガウンの脱ぎ方(例)
首ひもをちぎる
汚染面が内側になるよう腰のあたりで折りたたむ
袖から両腕を抜く
適当な大きさにまとめ、腰ひもをちぎって外し、廃棄する
その他
- ゴーグル、フェイスシールド
- 目・鼻・口の粘膜を防御するために使用します。